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【レビュー】劇場アニメ「虐殺器官」を観てきました!【伊藤計劃】

投稿日:2017年2月16日 更新日:

私はこの原作小説を読んでいて、映像化の報に喜び、いろいろな経緯を経て、待ちに待った公開でしたので、かなり期待して観に行きました。
そして、とても満足感が味わえる作品でした。
普段、映画のレビューを書くほどには作品数を見てないので、ごくごく主観的な感想と、おすすめ出来る人にだけおすすめするためのレビューです。

虐殺器官のあらすじ

時代設定は9.11以後、テロの恐怖から逃れるために、極限の監視社会となった大国と、内線の激化によって虐殺が蔓延し、混沌とする弱小国に二分される世界での物語。
主人公のクラヴィスは、大国アメリカの諜報員兼、特殊部隊の隊員。
内戦を続ける国家に潜入、虐殺の首謀者たちを暗殺することで、世界の平和・秩序を守ることを目的としている。
この目的遂行のために身体も、感覚も、精神状態までもテクノロジーによって制御され、仕事して殺戮を行っていても心は常に平静を保つ。

特殊部隊の彼らが標的として追いかけるのは、小国を渡り歩き、常に虐殺の起こる中心にいるという人物、ジョン・ポール。
ジョン・ポールが現れると、それまで平和だったその国で半年もたたずに内戦が起こり、虐殺が始まるという。
「虐殺の王」ジョン・ポールを追う中で、クラヴィスはその制御された心で何を知り、何を思うのか。
そして、ジョン・ポールが世界に虐殺を振りまくその秘密にたどり着いた時、クラヴィスは何を決断するのか……。

アニメ映画「虐殺器官」をおすすめしたい人

虐殺器官

まず原作ファンの方はぜひ観てほしいです。
カットされているシーンで不満な部分もあるかもしれませんが、それでもこれだけのクオリティで映像作品になったことは素直に嬉しいと思えるはずです。

また、アニメの攻殻機動隊シリーズや、ゲームのメタルギアソリッドシリーズの世界観が好き、という人にもぜひ観てもらいたいですね。
ミリタリーバトルもの、近未来SFもの、意識や心と言葉の関係性などに興味のある人にはおすすめです。

普段はあまりアニメに興味がない人でも、スパイものやアクション映画が好きな人には、すんなり観てもらえるのではないかと思います。

原作者「伊藤計劃」

この映画を解説する前に、やっぱり原作者の伊藤計劃氏を紹介する必要があると思います。
原作者の伊藤計劃氏は、2007年に「虐殺器官」でデビュー、その後数冊の作品を書いて、デビューからわずか2年後に癌のため亡くなっています。
このデビュー作は、2000年台の日本SFベストに挙げられるほどの評価を受け、SF小説業界における期待の新星として非常に強い存在感を持っていました。

当時、店頭に並ぶこの強烈なタイトルを見かけて印象に残っている方も多かったのではないでしょうか。
この残虐さやグロテスクさを感じさせるタイトルに反して、実際に読んでみるとこの作品はとてもスマートな印象を受けます。

緻密に構成された近未来SFの現在から地続きであることを感じさせる世界観、現実感覚から一歩先に進んでしまった戦争、そして生と死をテーマに描かれた物語が、決して難解にならない軽めの文体で描かれていて、SFにそれほど慣れていない人でも読みやすい作品ではないかと思います。

私自身がこの作家さんを知ったのは、ゲームデザイナー小島秀夫氏のwebラジオで紹介されていたことがきっかけでした。
伊藤氏自身も小島秀夫作品のファンであり、そこから大きな影響を受けたと語っていいます。
そのテーマ性や世界観にも共通した部分があったので、当時メタルギアソリッドにすっかりハマっていた私は、すんなりとこの作品に入り込むことが出来ました。

Project Itoh

デビュー作の虐殺器官を発表後、闘病生活をを続けながら執筆を続け、虐殺器官の実質的続編「ハーモニー」を完成させた後、34歳の若さで逝去されました。

この生涯で二篇のオリジナル小説、「虐殺器官」と「ハーモニー」。
その後、円城塔氏によって遺稿を引き継いで完成された「屍者の帝国」をあわせた3作品が、Project Itoh(つまり伊藤計劃)と題して劇場用アニメ三部作として制作されました。

元々は2015年に公開される予定だった「虐殺器官」ですが、当時の制作会社マングローブの倒産という、とんでもないアクシデントによって公開が延期。

その後プロデューサーの山本幸治氏が立ち上げたジェノスタジオが引き継ぐ形で制作が再開され、待ちに待った2017年2月、本来は最初に公開の予定だったのが、結果として最後の公開となったのです。

ちなみにこのジェノスタジオ、設立前、山本氏は内々で虐殺スタジオと呼んでいたという話で、それだとさすがにあんまりなので、少しもじった名前になったみたいですね。

映画と原作小説との違い

多くのレビューでも指摘されていますが、原作で描かれている主人公の行動の動機となる過去の出来事がなど、映画では大きくカットされています。
これはもちろん映像作品としての尺の問題もありますが、あえて意図的にそうしているようにも見えます。
結果、この映画において主人公のクラヴィスは、特殊な事情を抱えていない「普通の人」として描かれている印象があります。
これは、主演声優の中村悠一さんもインタビューなどで答えているのですが、それだけにこの物語の出来事に対して、ニュートラルな立場から、観客と同じ視点で物事を見つめる役割を持たされているのかもしれません。

虐殺器官の見どころ

さて少し長くなりましたが、映画を鑑賞してきた感想について綴っていきます。

作画が良い

この映画の見所として、まずは作画が素晴らしいです。
キャラクターの造形は現実味の強い世界観を邪魔しないくらいのリアルさで、欧米人らしい顔の特徴も出しながら変にくどくはならず、アニメを見慣れている人でも違和感ないくらいの、スマートな作画という感じ。
個人的にもこのくらいの造形のキャラデザインはとても好みです。

主人公は美形だけどキラキラしてないくらい、ヒロイン的立ち位置の女性も、あぁ、こんな顔の人、実際いるかもと思わせる表情で描かれています。

そして、戦場シーンを彩る兵器や装備のデザインも、先進的でありつつリアルさを感じさせる、とても良いバランスのメカデザインだと思います。

世界観描写

SF的なガジェット類が絵で表現されるので、とてもわかり易い。
ちょっと攻殻機動隊を彷彿とさせますが、設定的にはもう少し現実に近い技術を感じさせるガジェットが多かったです。

環境追従迷彩(透明ではなく、周囲の色をスキャンして同化する)や、口の中でキーボードが打てるマウスピース、目薬を指すように眼球に貼り付けるディスプレイ装置など、微妙にローテク感が残ってる所が良いですね。

ドローンのような無人支援攻撃機や、上半身のない脚だけのデザインで会議室を歩き回るお手伝いロボがいたりと、現代技術で見かける要素がちょこちょこ入ってる感じもいいですね。
また人工筋肉の生体兵器のようなメカデザインも、戦場を程よく不気味に彩っていて、テーマ性にも通じる雰囲気を持っています。

言葉の力

原作小説には非常に意味深い台詞が多く、また情報量も多いため、かなりカットもされているのでしょうけど、それでもかなり台詞の多い映画です。
しかしそれがいいのです。
私個人は、それこそ攻殻機動隊を始めとした押井守映画などで、すっかり慣れちゃってるというのもありますが……。
メッセージとしてはわりと受取りやすい言葉の表現ですので、ちょっとくどいけど論理的な話の運びを感じさせてくれる、観ていてちょっと知能指数が上がった気分になれる映画です。

声優さんの力

声の配役がまた良い役者さんばかりで、クラヴィス役の中村さんやジョン・ポール役の櫻井さんも本当に素晴らしいです。
しかしメタルギアソリッドファンの私としては、管制室から作戦指揮をするロックウェル大佐役の大塚明夫さんと、主人公の相棒ウィリアムズ役の三上哲さんを挙げずにはいられません。
国家による特殊暗殺部隊のシチュエーションも相まって、ついついボスとオセロットを思い出してしまうのもスタッフの狙い通りかもしれません…。

いまいちな所

この映画のちょっとしんどいなと思うところ、人によってはおすすめできないところも……。

分かりづらい言葉による、会話の多さ

これは見どころでも書きましたが、全体的にセリフが多く、重要なシーンが会話によって成り立っています。
もちろん迫力ある戦闘シーンや、飽きさせないような展開は盛りだくさんなのですが、人によっては話の山場で退屈と感じる部分があるかもしれません。

しかもその会話の内容が、やっぱりちょっと難しいんですよね。
テキストで読めばそこまでじゃないんですが、台詞として音で聞くと難しい。
原作小説未読で、ぱっと一度観ただけではしっかり把握するのは難しいお話ではあると思います。

殺戮の描写がストレート

人の体がモノ扱いされるような部分もテーマ性に繋がるため、あえて演出過多にならない程度にドライに描かれているのですが、とにかくたくさん人が死にます。
特にグロ押しの映画ではないのですが、R15+ですし、主人公が戦う相手はかなりきっちりと殺されていくので、人が死ぬ、殺される表現が苦手な人にはかなり辛いかも……と思います。

話の結末が分かりづらいんじゃないか?

これはネタバレとも言えるかも知れない部分なのすが……。
多分原作を読んでいないと、物語のラストシーンがちょっとわかりづらいんじゃないかと思います。
もし、この映画の雰囲気は好きだけど結末がちょっと意味分からないな……と思った人がいたら、ぜひネタバレ解説なり、原作小説を読むなりして、この物語の結末を確認してほしいです。

最後に

というわけで、良いところも悪いところも書いてみましたが、全体的にはとてもよく出来ていて、私自身、満足度はかなりありました。
ぜひ、劇場へ足を運んでみてください。
小説版も読んでおけばさらに理解が深まると思います。

 

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