米林宏昌監督のスタジオジブリ脱退後、スタジオポノックを設立しての初作品である『メアリと魔女の花』を鑑賞して参りました。
スタジオジブリでの『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を含めて三作目となる今作、世間では低い評価も見受けますが果たしてどんなものであったか、
感想も含め追って振り返りたいと思います。
このページの目次
米林宏昌監督について
よくジブリだと思ってた~とか、ジブリのパクリだとか言われますが…微妙に違います。
『メアリと魔女の花』は先にも書いた通りスタジオジブリから独立した米林宏昌監督と西村義明プロデューサーが立ち上げた「スタジオポノック」の制作です。
と、言うのもスタジオジブリは、2014年に制作部は休止ということになりアニメ映画から撤退しました。(結局また宮崎駿が引退撤回して今年制作部の再募集していますが…)
特に米林監督は「もののけ姫」では動画、「千と千尋の神隠し」以降は原画、「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」では監督と、まさにジブリを支え続けていた人物なのです。
特に「崖の上のポニョ」では魚の群れの描写で宮崎駿監督にも絶賛されていて、アニメーターとしての技能も高い作画畑出身の監督なのです。
あらすじ
原作本はイギリスのメアリー・スチュアートの『The Little Broomstick(小さな魔法のほうき)』
両親の仕事の関係で一足先に赤い館村へと引越して来たメアリが、ひょんな事から7年に一度しか咲かない”夜間飛行”と呼ばれる魔女の花を偶然見つけてしまった事で、強い魔力を得て魔法の世界の”エンドア大学”へと導かれてしまいます。
そしてその強力な魔法の力を持った魔女の花を巡り、徐々にメアリは黒い陰謀に巻き込まれていく事となってしまうのでした。
メアリと言う女の子
赤いくせっ毛をコンプレックスに持ち、他人に褒められたい願望が強く、つい他人の役に立とうと積極的に働きかけるもいつも詰めが甘くて失敗ばかりの女の子。
それでいていざ褒め称えられると身の丈以上の態度に出てついつい調子に乗ってしまう多感な時期の女の子に有りがちなはつらつとした性格の持ち主のようです。
そして杉咲花さん演じる高めでちょっとツンツンした声がそのくせっ毛が印象的なキャラクターにマッチしていてとても可愛らしいです。
何も悪いことはしていないのに巻き込まれる可哀想なピーター
赤い館村に住むメアリと同年代の少年。メアリのくせっ毛をからかったりと少々いたずら好きな活発な性格の人物です。
今回は魔女の花をめぐる騒動で花の在り処としてメアリが喋ってしまった嘘の在り処としてピーターの家を教えてしまったことでエンドア大学に誘拐されてしまったり、人体実験の材料とされてしまったりと見事に貰い火で不幸な目に遭ってしまう悲しい役割です。
それでも諦めずに最後までメアリとともに戦う姿は勇ましく、神木隆之介さんが演じることで美少年感も5割り増しです。
今回の悪役はエンドア大学側
初見はいい人そうですがそれは大切な実験にうまく誘い込むための表の顔、マダム・マンブルチョークとドクター・デイはかつては教育熱心な教師だったのですが、たまたま手に入れた魔女の花の魔力に魅入られてその魔力を人間に移植して誰もが魔法を使える世界にしようと、実験の失敗もいとわずその危険な人体実験や動物実験に没頭して行くのでした。
そんな折にもう手に入らないと思っていた魔女の花の在り処を知るメアリが登場し、再びその野望が再熱しようと動き出すのでした。
フラナガンは隠れたヒーロー
佐藤二朗さん演じるフラナガンはエンドア大学で魔法のホウキの管理を担当するキャラクターです。
コミカルな演技が光る楽しいキャラクターですが、メアリが窮地に立たされると必ず駆けつけてくれる頼れる一面を持っています。
…でもその実はただ”魔法のホウキの管理”と言う自分の業務をただこなしてるだけなんですけどね。
動物たちもたくさん出てきて見事に動きます
村で出会いメアリを”夜間飛行”の咲いている処へと導いた恋人同士の猫ティブとギブを始めとして、エンドア大学で変身魔法の実験台として捕えられてきた数多くの動物たちもその種特有の動きを見せながら見事に動き回ります。特段アニメにおいて嘘くさい描写がされがちな猫ですらも物の見事に描かれていて、まず一見の価値は十分にあると考えられます。
ジブリオマージュと呼ばれるシーン
いつもハツラツとしていて前向きな独り言が多く、青空を仰いで草原で寝そべったりとメアリも期待を外れずジブリ娘だったりします。
そして「天空の城ラピュタ」パズーの何でも出てくるカバンのように、メアリも大きながま口のカバンを持っていて色々な物を出し入れします。
さらに「魔女の宅急便」のデッキブラシのように、初めて乗る魔法のホウキは言うことを聞かずに大暴れです。
そしてクライマックスシーンは「天空の城ラピュタ」のバルスや、「もののけ姫」のシシ神に首を返すシーンを彷彿とさせて手に汗握ります。
まだまだきっと沢山のジブリオマージュが隠れている事と思います。ソフト化の際には何度でも見返してもっと見つけてみたいものです。
話はちゃんとまとまってるが、やや駆け足
メアリが”夜間飛行”と呼ばれる魔女の花を見つけた事で一晩限りの魔法の力を得て、魔法のホウキにまたがるとあれよあれよと強引に魔法の世界へ連れて行かれてしまう”異世界に迷い込むタイプ”の物語です。
そして魔女の花で強い魔力を得ているが為に魔法大学でも事が順調に進み過ぎたり、その魔法の力を賞賛されたり、
いわゆる”ファンタジーのお約束”が続いてやや情報過多のままクライマックスまでエスカレーター式に運ばれてしまう感が”つまらない”と言う感想を受けてしまうのかもしれません。
ですがそれは物語の展開が面白くないと言うよりも、魔法などを始めとしたファンタジーの世界に興味があるかどうかに左右される様な気がしました。
興味のない学問を次々と語られてもただ眠たいだけですからね。
そうした意味である程度ファンタジーに関する知識を持っている方やRPGをやる程度には興味のある方にはとても楽しめる作品に仕上がっていますので安心してご覧ください。
元々スタジオジブリで経験を積んだスタッフが多数参加しているだけあって作画は超安心満足のクオリティーとなっていて、作画好きにはたまらない内容でもあります。
さらに背景スタッフにはあの男鹿和雄さんも参加されていてスタジオジブリ作品と比較しても負けていない仕上がりでした。
さてそんなポストジブリの名高いスタジオポノックの初作品!
どうしても「宮崎駿」というあまりにも大きすぎる壁があるのでそちらと比較になってしまいがちですが、米林宏昌監督のジブリ独立後初監督作品として及第点だと思います。
個人的には間違いなく今の時点での米林監督作品史上一番良い作品だと思います。
そういった意味でこれからに期待ですね。
皆さんもぜひ、この夏にご覧ください!