2017年1月6日第三部冷血編の公開を持って丸一年をかけて傷物語は完結を迎えました。
第一部の鉄血編の公開を鑑賞し、さて次はまだかと楽しみに一年を過ごした記者サルウデが感想を含め傷物語を振り返ってみようと思います。
このページの目次
傷物語とは?
西尾維新による化物語を始めとした<物語>シリーズの2作目にして物語の”始まり”を描く作品が傷物語です。
2016年1月8日より第一部鉄血編に始まり、第二部熱血編を経て2017年1月6日第三部冷血編と、丸一年をかけて傷物語が公開されました。
主人公が初めて怪異と遭遇し、その後多くの怪異と関わりを持つ事となるきっかけとなる、怪異の王 吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(以下キスショット)との出会いや関係が描かれています。
発表は化物語が一番はじめですが時系列としては傷物語→猫物語→化物語→以後続編と言う流れが正しくなります。
<物語>シリーズとは?
人間にとり憑くなどして害をなす”怪異”と対峙する運命を担ってしまった男子高校生 阿良々木暦(あららぎ こよみ)(以下、主人公)と、怪異と関わってしまったヒロイン達との交流を描いた作品群の総称です。全作品の題名に”物語”が付く事からこう呼ばれるのです。
ともかく鑑賞目的はキスショットもとい坂本真綾
画像出典:YouTube/傷物語Ⅰ 鉄血篇/本予告
さて本作 傷物語を記者サルウデがどの様に楽しみにしていたかを述べるなら、見出しの通りです。
正直、化物語が放映されていた当時さして興味を示していなかったのは事実で「よくあるラノベのTVアニメ化」ぐらいの認識でした。
が、このフラットな興味の視線に強烈なフラグを立てたのがキスショットこと忍野忍(後に猫物語で忍野メメが命名した名前)がミスタードーナッツ100円セールを主人公にせがむシーンなのでした。
「え?この子喋るの?しかもこの声は坂本真綾では??」
坂本真綾さんと言えば清潔感のある女子高生から全身義体のメスゴリラまでやや年齢の高いキャラクターの声を担当する事が多い声優さんです。
従って幼い年齢層での出演はほぼこの<物語>シリーズぐらいだったりします。
もちろん27歳キスショットから10歳キスショットまでを使い分けて表現できる技術があるからこそ坂本真綾さんである訳なのですが…この年齢が下がるにつれ猫っぽくなる声質が猫好きとして堪りません!
こうして、すっかりキスショットにハマってしまった記者サルウデはもう傷物語を観るしかなかったわけであります。
3人との戦いは対キスショット戦のお膳立て
物語の発端は主人公が、3人の吸血鬼ハンターによって両腕・右脚・左脚を奪われ瀕死の状態となったキスショットの命を救ってしまう事から始まります。
これをきっかけに主人公はキスショットの四肢を取り戻すために戦う事になるのですが、
結果から言って、3人が思ったほど強くありませんでした。
主人公は吸血鬼であるキスショットに噛まれる事でその特性である不死身を受け継いでいるのですが期待していたほど手に汗握る戦いは繰り広げられず、不死身の体に主人公が慣れるにつれその戦いは薄味に…結果尻つぼみな印象は否めません。
実際あっさりすぎる事は主人公も自覚がある様でその疑問点について忍野メメと意見を交わすシーンも盛り込まれていたりします。
そして、ようやくすべての四肢を取り戻し完全に元の姿に戻ることができたキスショットとの間に、主人公はは恋愛感情とは違う一蓮托生の愛着や、人間と怪異の間にも分かち合うことができたと言う自負を抱くのですが、その期待は脆くも裏切られることになります。
本来の姿を取り戻したキスショットは、本来の怪異としての力と衝動を保持するため当然の様に”人間狩り”を行います。
そこで主人公はキスショットを助けてしまった事への責任を感じ、キスショットを退治する事を決意します。
3人との戦いと違い主人公もキスショットも不死身です。
互いが攻撃する度に四肢が飛び、胴が裂かれ、首がはねられます。
しかしそこは不死身同士、終わりのない血で血を洗う戦いが繰り広げられるのです。
並行してキスショットの成長を見守る
画像出典:YouTube/傷物語〈Ⅱ熱血篇〉本予告(8/19全国ロードショー)
さらにキスショット特有(?)の特性として肉体やエネルギーを欠損することで弱体化し、外見年齢がその量に応じてさかのぼる仕様になっています。
それぞれ奪われた四肢を取り戻すにつれ、実際の27歳程度の肉体を上限に10歳、12歳、17歳と少しずつ年齢を取り戻していくのですが、一つバトルが終わり体を取り戻すごとに成長し、それぞれの年齢のキスショットが姿を披露してくれるのですがその都度服装や髪型も変わり、どの彼女もとても魅力的でより取り見取りの姿で観客の目を楽しませてくれます。いや、魅せられてしまいます。
是非、ご観賞の際はキスショットの推し年齢を決めてみるのも一興ではないでしょうか。
(記者サルウデ個人は12歳程度に成長したキスショットが一番形状的に猫っぽく動きもしなやかでツボでしたが、残念ながら一番出番が少なかったりします。残念)
これは罪と罰の物語…
さて、話を本筋に戻しましょう。
この傷物語は主人公と怪異双方の過ちによって生まれた”罪”がことの発端となります。
主人公 阿良々木暦は、人間の害となる怪異である吸血鬼の命を救ってしまった罪。
キスショットは、人間を狩りその血肉を得る。その罪を犯し続けなければ存在して行く事ができません。
人間と怪異の双方が犯した罪を償うために負う罰を見出し、解決の糸口を見つけることがこの傷物語が終幕するのに必要な主題となります。
罪をなかったことにはできない。
罰を受けてもなかったことにはできない。
しかし、明確な解決策を見いだせない主人公はアドバイザーとして登場する忍野メメの名を呼びます。
忘れてはいけない忍野メメ
<物語>シリーズに数多く登場するチートキャラ最初の一人 忍野メメも今作品に颯爽と登場します。
登場シーンから3人の吸血鬼ハンターの一斉攻撃を軽々と受け止めてしまうチートさ加減はまさにカッコイイの一言!!
そんなに強いなら代行して四肢を取り戻してやれよと思ってしまうのだけど、
「いやいや、僕にはバランスを取る事しかできないんだよ。あちら側<怪異>とこちら側<人間>のね。」
とあっけなく断ってしまうなど、飄々とした強さと謎を秘めたオジさん(お兄さん?)キャラです。
この忍野メメはその後の化物語終幕まで登場し、怪異の豊富な知識を主人公にアドバイスしてくれます。
忍野メメは前述のセリフが物語る様に怪異と人間の世界のバランスを取るために存在する人間を一段階超越した様な存在です。今回もただ主人公と怪異と吸血鬼ハンターが起こした世界のバランスを乱しかねない争いに重い腰を上げて仲裁に入った印象です。
忍野メメからすれば主人公がキスショットを助けさえしなければと、厄介に思っていたかもしれません。
そんな彼が今作でしてくれる事は仲介とアドバイスだけ、自らは動かず中立の存在としてバランスが崩れぬ様に静かに監視し続けるのみです。
そして今回も”双方が円満に解決方法”を見つける事ができなかった主人公に、
”双方が共に損をし合う方法”を提案し、この物語の終幕への架け橋となる重要な役割を担う事となっています。
追伸、傷物語はPG-12+である。
この映画には年齢制限が設けられています。
不死身の戦いを表現したグロテスクな表現がそれを表しています。
しかし、それだけで年齢制限が課せられている訳ではありません。
テレビシリーズをご覧頂いた事のある皆様には常識ではありますが、<物語>シリーズにはギリギリのエロシーンが満載です。
実際の性行為を描くことなくいかにエロさを表現できるかを突き詰めているかの様に、まさに”都条例”ギリギリの表現もまた<物語>シリーズの見所であります。
今回その矢面に立たされるのがもう一人のヒロインである委員長こと羽川翼となります。
開幕早々に春の嵐による壮大なパンチラにはじまり、三部作それぞれに阿良々木暦と羽川翼の過激な”戯れ”が描かれ、シリアスでダークなこの傷物語の”箸休め”を担っています。
正直、一連のエロシーンに必要性がなく蛇足の様にも思えるかもしれない節はあるかもしれません。(現に飛ばして観てしまっても話の統合性は損ないません。)
しかし、主人公が元人間の吸血鬼である前に健全な性欲を持った男子高校生である事を主張し、人間に戻りたいと言う強い意志を象徴するには間違いなく重要なシーンであると思います!
また三部作を経過するにつれ、羽川翼とのエロシーンの内容も尺も過激さをパワーアップしていきます。
健全な男子諸君はそこに注目し、刮目する事をお勧めします、と言うか刮目せよ。
これから<物語>シリーズを始めても遅くはない!
正直な意見として全く<物語>シリーズに興味がなかったり、少しの知識も持ち合わせないアニメのライトユーザーにこの作品を手放しにお勧めする事は難しいかもしれないと記者サルウデは考えます。
あくまで<物語>シリーズを待望するヘビーユーザー向けに手塩にかけて作り上げた感は否めず、やや敷居は高いかもしれません。
ただ言える事は<物語>シリーズに興味が少しでも興味があるのなら是非鑑賞すべきであるということです。
さいわい”物語の順番”という意味ではこの傷物語からご鑑賞頂く事も決して間違ってはいません。
まだ<物語>シリーズを観ていなかったり、避けていた方達にも是非、この傷物語を鑑賞して頂ければアニメシリーズとしての<物語>シリーズに興味が湧く事間違いありません。
決して遅いなどという事はありません。
是非映画館やレンタル、むしろ購入して繰り返しご覧ください!