マンガの神様と呼ばれる手塚治虫氏の作品の中で、最も人気のある作品のひとつと言って過言ではないのが「ブラック・ジャック」。
連載開始から約40年たった今となっても、医療マンガの代名詞として多くの根強い支持のある作品です。
京都国際マンガミュージアムでは、現在「医師たちのブラック・ジャック展」という企画展が行われています。
「ブラック・ジャック」が、医師達からどのようにとらえられているのか。
非常に面白い企画となっています。
ブラック・ジャック掲載までの道のり
手塚治虫氏が漫画家になる前に医大に通い、医師免許を取得していたのは有名な話です。
本人も「本業は医者で、漫画家は副業」という言葉を自伝で残しているくらいです。
しかし、意外と連載された経緯を知る方は少ないのではないでしょうか。
実は、「ブラック・ジャック」を掲載する前は漫画家生命の危機にあったことを。
鉄腕アトムをはじめとした様々なヒット作品で日本のマンガを発展させてきた手塚氏でしたが、1970年代には時代遅れのマンガ家とみなされており、得意にしていた少年漫画の分野でヒット作品を生み出すことができなくなっていました。
青年誌に進出するも、青少年向けの性教育を意図して執筆した「やけっぱちのマリア」が糾弾を受け、1973年には虫プロ商事と虫プロダクションが倒産。
巨額の借金を背負うことになり、漫画家として窮地に立たされていました。
そんな中で、週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載を開始したのが「ブラック・ジャック」です。
人気が低迷していた手塚氏の最後を看取ってやろう、という編集長の厚意で連載開始することになりました。
編集部側も、4~5回連載して終了を予定していたくらいで、連載開始後も巻頭カラーもなく、地味な扱いが続きました。
しかし、編集部の予想を裏切ってヒットし、長期連載となったのです。
このような連載までの経緯を知ると、「ブラック・ジャック」という作品が手塚治虫氏の漫画家生命を救い、復活をアピールすることになった作品だということがわかります。
ブラック・ジャックでの医療描写
前述したとおり、医師免許を持っている手塚氏の医療知識を遺憾なく発揮した医療漫画が「ブラック・ジャック」になります。
しかし、「ブラック・ジャック」で描かれる医療描写はというと、医学的なリアリティと並行して大胆なフィクションがおりまぜられています。
専門家からみたら、突拍子もない治療法が描かれている話もあります。
これは、手塚氏が医学的事実よりも、医者のあり方や生命についてなどの物語性を重視したからだといわれています。
ブラック・ジャックは生命を繋ぎとめることを根本としながらも、医者は延命させることが本当に患者にとって幸福なのかなど、医師としてのジレンマに焦点を置いている作品であり、それを様々なアプローチで提示されているところが大きな魅力となっている作品となっています。
展示風景
京都国際マンガミュージアム 2階の企画展用のスペースに、現在活躍中の医者の方が自ら選出した「ブラック・ジャック」のシーンについてコメントが書かれているパネルが並びます。
その横には、選出された話のマンガまるまる1話分がパネル展示されて、作品内容を知ることできます。
展示パネルの下には掲載されていた号の週刊少年チャンピオンと、単行本が展示されています。(残念ながら、こちらのマンガ雑誌と単行本はお手付き厳禁)
選出された話は、医師としての在り方を考えさせられるものや、医療の限界への無力感を描いた話、ブラック・ジャックを通して描かれる感動的な人間ドラマが多い印象を受けました。
ブラック・ジャックは天才外科でどんな難病奇病も治している医者ではありながら、手術を全て成功させているわけではありません。
時には無力感を味わされながらも、熱く命へと向き合っていくことは、多くの医師達への理想とされるところなのではないかと思います。
その他にも、「手塚治」として執筆した医学博士論文の紹介や、2013年ブラック・ジャック40周年を記念して読者が選んだベストストーリー30をパネル展示で紹介されています。
こちらのサイトで、ランキングされた作品のあらすじなどがまとめられています。
http://www.akitashoten.co.jp/special/blackjack40
ベストストーリー30のパネル展示の向かい側には、ブラック・ジャック作品が置いてあり、気になった作品をすぐに読めるようになっています。
気になった作品をぜひ、チェックしていただきたいと思います。
写真撮影コーナーも
展示室奥には、写真撮影できるコーナーがあります。
まずは、ブラックジャック・ピノコの等身大フィギュア。
とても精巧に作られているフィギュアと一緒に写真撮影はいかがでしょうか。
また、ブラック・ジャックの手術室を再現したコーナーも。
無料レンタルできる手術着を着てブラック・ジャックの助手となったり、患者として手術台に寝転んだり・・・
ブラック・ジャックの世界に溶け込んだ写真撮影ができますので、様々なシュチュエーションでの写真撮影を楽しむことができます。
開催は5/10(日)まで。
興味がある方はぜひ見に行っていただきたいと思います。
医師たちのブラック・ジャック展 詳細情報
会期:2015年2月28日(土)〜5月10日(日)
会場:京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー1・2・3
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:毎週水曜日、4/30、5/7(ただし 4/1、4/29/、5/6は開館)
観覧料:無料 ※ただし、マンガミュージアムの入場料として大人 800円、中学・高校生 300円、小学生100円は別途必要
お問い合わせ先:京都国際マンガミュージアム
住所:京都市中京区烏丸通御池上ル(元龍池小学校)
TEL:075-254-7414