攻殻機動隊S.A.C.や東のエデン、009 RE:CYBORG、などとSF作品に定評のある神山健治監督の最新作『ひるね姫』が2017年3月18日に公開されました。
神山監督が夢見がち(色んな意味で)な女子高生を描く?青春ドラマに挑戦か?とやんわりとした前情報で鑑賞して参りました。
夢見がちな女子高生 森山ココネ
冒頭いきなりスチームパンクよろしくSFな世界観が展開されて「おいおい女子高生が昼寝する映画じゃないのかよ!だまされた!」
と心の中でツッコミながら「ああなるほどこれが夢の世界か」と少しして納得し、ヒロイン「森山ココネ」の夢の中での姿「エンシェン」(中盤で種明しがありますが)が駆け巡る世界を楽しめるようになっていきました。
現実でも夢の中でもヒロインは駈け回り、やや人間離れした運動神経がアニメとしての醍醐味を味あわせてくれます。
そして舞台が岡山ベースということで、田舎の女子高生丸出しの岡山弁も中々の味わいを醸し出していて一貫して明るく前向きなココネの魅力がよく表現されています。
現実と夢を行ったり来たり
現実の最初の舞台が岡山県倉敷市とかなりのノスタルジックな雰囲気を醸し出していますが時期は2020年の東京オリンピック3日前と少し未来の設定となっています。
そんなノスタルジックな舞台にはヘッドギアを付けてネットに没入する学生であったり、ポンコツそうなトラックが行き先を入力すると走り出す自動運転が搭載されていたりと不釣り合いなハイテクが垣間見え、この作品はSFなのだと再確認させられます。
対するココネの夢の中の世界『ハートランド』は古き良き雰囲気を醸し出したスチームパンクな世界観です。
機械こそ至高であると言う考えの国王の元、国民は自動車を日々作り続けるという歯車やピストンが象徴的な実にローテクな油臭い雰囲気が漂います。
この真逆のような世界は実はこの作品の主題でもあるだろう”世代交代”と言ったようなテーマを上手く象徴していて、果たしてどの様に二つの世界が関係していて描いているのか、ココネはどうやって問題を解決しながら二つの世界を駆け巡るのかにも注目して観て頂きたいです。
実はロボットアニメでもある
繰り返す様ですがこの作品はSFですので、夢の世界だけではあるものの敵である”鬼”と呼ばれる巨大怪獣が登場し、それを打ち倒すために巨大ロボットが登場しちゃったりします。(残念ながら写真は”鬼”しか用意できませんでした)
登場した時は「おいおいw」と思ってしまったりしますが、この巨大ロボットまでもがローテクで各四肢に発電・操縦機関(しかも自転車発電)が搭載され胴部の司令塔からこれまた無線ではなく通話管で指示を出したりと根性で動かしている感じが熱血ロボアニメの様で楽しめてしまいました。
それでも”鬼”には動きが鈍すぎて勝てず”魔法”と呼ばれるいわゆるプログラミングなどのハイテク技術がローテク世界にも必要になってくるという流れがまさに継承や進化、世代交代と言ったテーマを上手く昇華させていて、一見難しい会話劇で消化されてしまいそうな題材もわかりやすく楽しむことができました。
まとめ
神山監督お得意のSFテイスト満載の映画『ひるね姫』。
アニメ作品やライトノベルで多く扱われる異世界に迷い込んでしまう方式を”夢”というより現実的な要素で再現しつつ、神山監督らしいハイテクな未来感でまとめ上げられています。
また前向きに問題に立ち向かうココネの姿を通して”親子の絆”や”世代交代”と言った大切なテーマを分かりやすくとても広い世代に楽しんで頂ける様に描かれた素敵な作品となっています。
「自分の娘に観せたい映画」を念頭に制作されたということで納得の出来でした。