電車の旅はいいですよね。でも長距離となると結構お金がかかるものですが、「大回り乗車」であれば1駅分の切符で広範囲を回ることができるんです!
ちなみに「大回り乗車」は通称ですが、鉄道会社が定める「運賃計算の特例」がもとになっており、AからDまで移動する際に、BとCを経由出来る場合、どちらも選択できるという特例で、それを広範囲に適応したものが「大回り乗車」になります。
一番簡単な例としては、環状線で隣の駅へ行く場合、反対向きの電車に乗って遠回り1周して目的の駅にたどり着く…というのが分かりやすいのではないかと思います。この環状線の遠回りと同じ方法で、さらにもっと長距離で挑戦するのが大回り乗車という訳です。
はじめてこの記事で大回り乗車について知った人は「え?そこまで大回りしても大丈夫なの?」と思われるかもしれませんがいくつかの条件をクリアすれば大丈夫なんです。
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JRで大回りするための条件
JRでは指定の大都市近郊区間に限り、最短距離で鉄道に乗車しなくても同一料金で乗車することが出来ます。もちろん、改札を出ることは出来ませんし(出たらそこまでの運賃が加算)、重複して同じ路線には乗車したり、クロスするようなルートを乗車することも出来ません。
結果ものすごく簡単に言うと、区間内で一筆書きでコースを選ぶという一定のルールを守る必要が有ります。その範囲内で出来る限り大回りして最終的に切符の料金の範囲内の隣の駅などに移動するわけです。
今回の大回りルートについて
大回り乗車のコースとしては、大阪駅をスタートして反時計回りに、和歌山、奈良、柘植、草津、近江塩津、山科、新大阪と辿るコースを回ることにしました。大阪、和歌山、奈良、京都、三重、滋賀、京都、大阪の順で、兵庫県以外の関西をグルっと一周する感じになっています。(三重は関西なの?といいう議論は置いておいて…)
さて、コースを地図にまとめてみると、意外と縦長のコースになりました。イメージではもう少し横長なイメージだったのですが、路線図など簡略化された地図のイメージとは少し違いますね。
真冬にやると、南側と北側で全然気候や景色が違って面白いかもしれないですが、雪などの天候でダイヤが乱れている事が有るかもしれません。湖西線なんかは、雪以外にも風で遅延したり止まったりすることがあるので、運行状況については注意が必要かもしれません。
今回は、suz氏を誘って、筆者rascalと2人で回ってきました。半日程度かかる長丁場となるので、誰か誘って回るのが楽しいのではないかと思います。
なぜ反時計回りににしたのか?
実は以前にも筆者は大回り乗車に挑戦したことが有ります。その時は奈良から和歌山を通って大阪という今回よりは短いコースで時計回りを選択しました。今回も前回と同じように奈良-和歌山間を後半に持ってきてもよいのですが、日が暮れてしまう可能性が高くなります。
和歌山線に夜乗ると真っ暗で何も見えなさそうだし、せっかくなら先に乗って景色を楽しむ事にしたわけです。
逆に、時計回りで回ったほうが湖西線を早い時間に利用することになるのですが、夕方までならば快速が有ります。本数は多く有りませんが、上手く時間を合わせられれば若干所要時間を短く出来るでしょう。
琵琶湖など滋賀県の風景を楽しみたいなら、滋賀県を前半に持ってくるのも有りかもしれません。
まずは乗車前の準備…大阪駅で駅弁を購入
大阪駅スタートということでまず160円の切符を購入。ちなみに定期券はアウト、ICカードも不可ではないけどローカル線の車内でそれを証明できないため切符が一番安全とのことです。
それから大阪駅構内で駅弁を購入します。
というのも、普段JRに乗ることが少ない人もいるかとおもいますが、JRの駅は私鉄と違って、駅中の施設が控えめな場合が多いです。かなり大きな駅でもトイレと自販機程度しか施設が無い場合も多く、改札を出られない大回り乗車では食事に困ります。
実は、筆者は鉄オタなどと言える程では無いので、前回の大回り乗車でそのことを知らず、奈良の王寺駅で辛うじてパンに有りついて一周終える残念な鉄旅に…
このため、予め飲食店が設置されている駅の場所を把握しておくか、お弁当を用意しておくなどの対策が必要です。もちろん、出たとこ勝負で行くぜ!って感じも有りなのですが…
今回は安全策を取って大阪駅で駅弁を買ってから乗車することにしました。
なお、飲食店や売店を確認できたのは、大阪駅をはじめ新大阪駅や京都駅などの大型の駅、草津駅にはセブンイレブンが入っていました。また、確認はしていませんが、米原駅には飲食店が有るようです。
奈良駅などは駅も新しく大きいので、売店ぐらいは改札内に有りそうなのです改札を出ないとありません。その他比較的大きな駅でも売店すらないというパターンが多いので注意が必要かもしれません。
柘植とか近江塩津のように乗換駅になる駅にもう少し改札内の施設が有ると面白いのですが、乗降客数の問題も有って、中々難しいのかもしれません。
大阪駅を出発!環状線も座れて順調な滑り出しのハズが
買い物を済ませたら、8時52分発 間空/和歌山行きの電車に乗車。朝の通勤時間帯と被っているかなと思ったのですが、思いのほか空いていて幸先の良いスタートを切れました。座ってスタートです。
大阪ドームや通天閣など環状線ぽい風景を見ながら和歌山方面に快調に滑り出しました。
ところで、この電車は前4両が関空行き、後ろ4両が和歌山行きなのですが、見事に前4両に乗ってしまいました。このままでは関空へ行ってしまうので、切り離し駅の日根野駅で後ろ4両に乗り換えました。
詳しい人なら常識なのでしょうが、車内放送には十分注意して旅を続けてください。
和歌山駅でこの旅は終了!?中間改札が行く手を阻む
関空手前での切り離しの事などは有りつつも、比較的スムーズに和歌山駅に到着。奈良方面へ向かう和歌山線のホームへ向かいます。
和歌山線は以前にも乗ったことが有ったので、乗りさえすれば大丈夫なハズだったのですが、なんと以前には無かった「中間改札」なるものが設置されていました。
普通なら、JR内での乗り換えなので乗り換えるだけなのですが、改札内にもう一重改札が設置されているのです。いつの間にか和歌山線ってJRでは無くなってしまったのかしら?などとビックリです。
どうしたら良いのか?これでこの旅は終了なのか…などと悩んでいると…
駅員さんが見かねたのか中間改札の使い方を説明に来てくれました。大回り乗車で関西を回ってる事を簡単に説明したら、ああなるほどと理解してくださりインターホンを使った中間改札の通り方を丁寧に説明していただきました。
写真のように改札横の機械に切符を置きます。次にインターホンで大回り乗車をしていくことを説明すれば機械に設置されているカメラを通して切符を確認、改札をあけてくれます。
駅員さんの神対応に感謝ですが、関西で大回り乗車をする場合、和歌山駅で戸惑う事になる人も多そうですね。駅員さんは田舎なんで、すみません…なんて仰ってましたが、不正乗車なども有るかもしれないので仕方ない処置なんでしょう。分からない事は、人に聞いてみる物だなと実感しました。
和歌山線は以前に乗ったときとは車両も変わっていて、ロングシートでは有りましたが、以前より格段に快適。和歌山線は駅数も多く乗車時間も長いので助かります。
30駅と駅数も多く時間もかかりますが、色づきかけたミカンの果樹園や紀ノ川の景色を楽しみながら進んでいきます。
高野山へ行く観光客風の人たちも橋本駅で一斉に降りてしまって、以後はしばらく貸し切りに近い状態でした。橋本駅までは意外と海外からの観光客も多いようで、以前より国際色豊かな感じになっているようでした。
橋本駅は停車時間も長かったので、自販機で飲み物を補充できました。橋本駅を越えたあたりで、駅弁を食べたりしながら午前中は終了。
王寺や高田で乗り換えが必要かと思っていたのですが、この電車は桜井線を通って奈良まで直通だったので、この区間も最初に中間改札の使い方に戸惑った以外は比較的スムーズだった気がします。
やはり、和歌山線は景色も良いので、明るいうちに通ってしまうのが良い気がします。
加茂から柘植区間は今回唯一の非電化区間
奈良駅では20分ほど待って、次は加茂駅まで乗車。およそ10分と短時間の乗車です。
それから加茂駅にて亀山行き関西本線の気動車(ディーゼル車)に乗り換えて、三重県の柘植(つげ)駅へ向かいます。今回唯一の単両編成でした。
この関西本線で柘植へ一旦迂回するのルートは今回の大回り乗車の大きなポイントになります。一度、三重県を通れるというのも有りますが、滋賀を回る場合、ここで迂回をしないと京都-山科駅で往復のルートが被ってしまうので、新大阪駅までの大回り乗車が成立しなくなってしまいます。
という訳で、ローカル線では有りますが、関西本線で柘植へ行くのは大きな意味が有るわけです。
ちなみに、私は関西本線の加茂ー柘植区間に乗ったことが無かったのですが、中々魅力的な車窓だなと感じました。郊外の山間部を走る路線にも関わらず線路が真っすぐな区間が有ったり、緑のトンネルのような区間が有ったり、表情豊かな景色を楽しめます。
都市近郊では、電化が進められているの有って、気動車に乗る機会はほとんど有りませんが、電車とは違った乗り心地を楽しむのも良いですね。
この区間は、気動車なのも有ってか、やや、空調が弱く、カーテン締め切りで走っていました。そういう事情も有るので、車両の前部や後部に乗車すると景色を楽しめて良いでしょう。
この区間には忍者で有名な伊賀へ向かう伊賀鉄道に乗り換えるための伊賀上野駅があるので、海外からの観光客が乗車しており実際に降りられていました。
さてそのまま亀山まで乗ってみたい気もしましたが、JRが指定している大都市近郊区間は柘植駅までなので、諦めて下車。
柘植駅は特に売店などの施設は有りませんでしたが、中々広い駅で、乗換駅としては相応しい雰囲気の駅です。
琵琶湖線の新快速で、一気に近江塩津へ
柘植駅から滋賀県の草津駅へ戻って敦賀行きの新快速に乗車。草津駅は駅構内にセブン・イレブンが設置されているので、乗り継ぎ時間を利用して買い物などすると良さそうです。
和歌山以降、大半の区間が各駅停車の旅だったので新快速のスピードに圧倒されます。
やや乗客数も多く途中まで立ち席でしたが途中から座れたので、夕方の湖東の景色を楽しみながら快走してゆきます。今回、乗り換えが無かったので下車しませんでしたが、米原駅には飲食店が有るようなので、場合によっては一度休憩するのも有りかもしれません。
滋賀県最北端 近江塩津駅に到着!
琵琶湖最北端の余呉湖脇を抜けると、いよいよ近江塩津駅に到着です。余呉湖は、もっと湖畔を走るのかと思ってましたが、意外と距離が有るのでウッカリしていると見過ごしてしまうかもしれません。
そして到着した近江塩津駅も、トイレや自販機が有る以外は特に何もない駅ですが、電車が敦賀方面へ発車してしまうと取り残された感が凄く、今回の旅で最北端の駅に相応しい雰囲気の駅でした。
ちなみに、近江塩津駅は山中にポツンと有る駅なのも有って、日が沈むと照明に集まる虫が凄まじく、夕方のマジックアワーを楽しんだ後、近江今津駅までとりあえず乗車しました。
各駅停車の湖西線で京都方面へ
近江今津駅に到着したのは19:29だったので、もはや湖西線に快速は無く各駅停車 京都行きで大阪方面へ戻ります。もちろん、湖西線の車窓は真っ暗で琵琶湖を見たりは出来ませんが、和歌山線か湖西線のどちらかは真っ暗なのは仕方ないのでしょうね。始発に近い電車に乗れば、もう少し景色を楽しめるかもしれません。
真っ暗な中、辛うじて琵琶湖大橋の照明を見て堅田、山科と戻り、京都で最後の乗り換えを行い新大阪へ。湖西線に乗ってからは、やや眠気との戦いとなりましたが、関西の中でもこんなに違う景色を楽しめるというというだけでも、JR大回り楽しい体験でした。
到着時間は21時37分。12時間半ぐらいの旅となりました。
大回り乗車は地域の色々な場所も見られて面白い!
やや、後半グダグダになりつつも、何とか新大阪に21時37分に到着。改札から出られないのも有って、どこか観光地や名所を訪れられる訳では有りませんが、一括に関西と行っても色々な地域や景観が有るものだなと実感する旅となりました。
今まで乗車したことが無い路線も有ったので、今度は亀山へ行ってみたいなとか、伊賀上野辺りで忍者ツアーとかも面白そうだなとか、色々やってみたいことが出てきますね。敦賀までなら大阪方面からでも新快速で短時間で行けるのも分かったし、新鮮な魚介類やソースカツ丼なんかも食べに行けるかもしれません。
世の中、とかく行動に意味や意義を求められる事も多いですが、大回り乗車は、お金は無いけど気分転換したいなんて時にもお勧めです。ぽっかり予定が空いちゃった日なんかには、最寄りの駅から思い切って電車に乗ってしまって、大回り乗車にチャレンジしてみて下さい!大回り乗車はルールも色々有るので、不正乗車にならないようにお気をつけて!